室蘭市議会議員

小田中みのる

MINORU ODANAKA

小田中みのるの市議会レポート
VOL.55

民生常任委員会視察

平成29年10月17日~20日まで民生常任委員会による行政視察を実施しましたので報告します。

1 高松市

(1)子ども医療費助成について
高松市では、段階的にこども医療費助成を拡大し、小学生の入通院・中学生の入院助成(所得制限なし)を市単独事業として実施していました。

高松市では子育て環境の充実、少子化施策として子ども医療費助成に取り組んでいますが、本来、国の責任において全国一律となることが望ましいと考え、全国市長会等で国へ要請しているとのことであります。また、制度導入時の受診者数の増加(コンビニ受診)は見られなかったとのことでありました。

本市においては財政問題から子ども医療費助成の拡充が進められていない状況にありますが、高松市においても県内自治体と比べると単独事業が遅れている状況で、助成拡大を求める市民からの要望もある中、財政問題が今後の課題であるとのことでありました。また、制度構築においては「生活困窮者」と「子育て」どちらに視点を置くのか、視点の置き方が重要であるとのことでありました。

本市においても子ども医療費助成の拡充を求められていることから、非常に参考になりました。

(2)子育て包括支援センター
高松市子育て世代包括支援センターは、妊娠期から子育て期までの様々なニーズに対して、総合的相談支援を提供するワンストップ拠点として開設されており、相談や支援情報の提供、ケース会議の開催、支援プランの作成などが行われていました。

センターの特徴としては、ワンストップ支援ができること、また、市内8ヶ所に母子保健コーディネーターが従事しているため、地域のことをよく把握した専門職が身近な場所で支援することができること、さらに、センター業務の統括担当者を配置することで、ケースの相談支援に対する判断、助言指導、相談等を行う役割をしているとのことでありました。

今後の課題としては母子保健コーディネーターと地区担当保健師の役割の明確化と連携の強化、マニュアル等の整備や研修会の実施による保健師等の専門職の資質の向上、子どもの虐待予防やWケア(子育てと介護)等の問題の多様化に対する支援とのことであった。その他に母子手帳を補完する母子手帳アプリの説明がありました。

今後、本市において設置が計画されていることから、自治体の規模、出生数、妊娠届数の違いはあるものの、基本的な考えや運用等、非常に参考になりました。

2 神戸市

(1)神戸市子育て情報サイト「ママフレ」
 神戸市子育て情報サイト「ママフレ」とは、子育てに関する行政サービスを「届出」、「健康」、「お金」、「預ける」、「学ぶ、出かける」、「相談する」、「病院・急病」のカテゴリーに分類し、希望する情報のたどり着きやすいように紹介している子育て応援webサイトです。平成29年1月にリニューアルしましたが、その特徴は、絵本作家書下ろしの温かいタッチのイラストや写真を活用した、子育てに関する情報を楽しく見られるデザインに一新したこと、「いいね!神戸で子育て」と題して、子育て中のママ・パパの声を通じて、神戸の子育て環境を発信するインタビュー記事の掲載、「お子さんの年齢」、おかね、あずける、などの「カテゴリー」、未熟児、ひとり親などの「状況」を選択し、条件に合致するサービスを表示する「条件別検索機能」を追加したことなどが挙げられます。また、神戸で子育てに関連する施設や優しい取り組みを行っている事業者、団体、お店など子育てを応援するすべての方が「KOBE子育て応援団」であると位置づけ、それぞれの子育て支援の取り組みを「ママフレ」等により発信することで、「まち全体があなたの子育てを応援している」という機運の醸成を図っていました。

さらに平成29年8月28日からは、スマートフォンでも利用できるよう「ママフレアプリ『子育てタウン』を公開。また、スマートフォン端末のGPS機能を基に、現在地から「KOBE子育て応援団」登録施設までの経路や、徒歩での所要時間を表示する機能も併せて追加するなど、「必要な方に必要な情報が確実に届く広報体制」が図られていました。

(2)神戸市人と猫との共生に関する条例
神戸市では、以前から猫の引取り数、殺処分減少の取り組みとして、飼い主責任の明確化として引取り手数料の有料化、飼い主責任の指導の強化などを行うとともに、動物管理センターにおいて猫の譲渡会を開始、譲渡協力団体の協力を経て、インターネットによる譲渡会対象犬猫情報の拡散、㈱フェリシモとの協定締結により、ふるさと納税による寄付を幅広く集め、(公社)神戸市獣医師会が中心となって行う譲渡会のための「動物愛護支援事業」を推進などが行われていました。他にも平成17年度からは、地域猫活動(地域の理解のもと、野良猫の不妊去勢手術を行うとともに、地域の住民等の有志により、野良猫を適正に管理していくことで、野良猫の数とトラブルを減らしていく取り組み)にも取り組んでおり、地域猫活動の普及啓発の実施とともに、不妊去勢手術の助成制度創設されていました。

このような取り組みにより、一定程度猫の引取り数や殺処分数が減少していたものの他の政令市と比較するとまだまだ多く、捨てられた猫や外飼いの猫が繁殖して野良猫が増え,ふんや尿による悪臭や無責任な餌やりによるトラブルが発生しており、また,殺処分される猫の多くが野良猫が生んだ子猫であることから、このような問題解決のため、平成29年4月議員提案として「神戸市人と猫との共生に関する条例」が施行され、条例の趣旨を踏まえて「神戸市人と猫との共生推進協議会」を設立されており、市と連携して、野良猫の繁殖制限などの事業を行っていました。

推進協議会の事務局は、(公社)神戸市獣医師会に置かれ、他の構成団体として自治会連絡協議会や婦人団体協議会、商店街連合会、神戸新聞のほかフェリシモ、ネスレなどの企業も加わっていました。

事業収入としては、神戸市からの補助金11,000千円、支出では野良猫繁殖制限事業費で9,600千円(不妊去勢手術費用 1,000匹×8,000円など)のほか、事務局運営費としての補助金9,000千円もあり、合計20,000千円で運営されていました。しかし、今年度の不妊去勢手術がすでに予算を超えていることから、さらに補助金の補正を検討しているとのことでした。

なお、平成28年度の動物愛護支援事業へのふるさと納税は、463件8,576千円。

本市においても野良猫等の問題が表面化してきていますが、市としての対策がない状態であることから、今後は、北海道やボランティア団体との連携を強化するとともに、地域猫活動に対する補助金のあり方など、積極的に検討する必要があると感じました。

3 奈良市

(1)安心・安全“なら”見守りネットワーク事業
奈良市では、社会福祉の充実と「福祉天国」の理想を掲げ、福祉のまち奈良を目指している中、国が進める認知症対策の実施とともに、奈良市独自の対策として市役所と西部会館に相談窓口を開設するとともに、行方不明高齢者対策として「奈良市安心・安全“なら”見守りネットワーク事業」をスタートさせました。

この事業は、認知症で行方不明になる可能性のある方の情報(特徴や写真)を事前に登録していただき、所在不明の場合には市役所から関係機関へメールが送信されるシステムで、登録者にはQRコード入りのシール40枚が無料で配布されます。

この事前登録制度は在宅に限り利用でき、1年更新で、施設等に入居した場合などは解約され、自分で登録困難な方は、包括支援センター長が代理で申請できる点が大きな特徴です。

制度の流れは、事前登録届け出書及び同意書を市役所に提出することにより、整理番号が交付されます。その後、QRコードの配布やGPS携帯端末の有料貸し出しが行われ、情報をデータ化し、警察や地域包括支援センターと共有されます。QRコードは持ち物や、靴、帽子、下着などにアイロンで接着できるようなシールになっています。このシールには事前登録番号とQRコードが印刷されていて、それを読み取ると警察と市役所福祉課の電話番号が表示され、そこに連絡するように書かれています。連絡を受けた機関は事前登録番号から本人確認ができるシステムで、個人情報は一切含まれていません。

課題としては、QRコードの貼り付け方が分からない、GPS携帯端末を持たずに外出してしまうなどが挙げられていました。

小田中みのる
室蘭市議会議員