八王子市議会議員

相沢こうた

KOHTA AIZAWA

エネルギー関連
VOL.15

【原子力発電・・1】
~原子力発電について・はじめに~

◎原子力発電については2011年3月11日の東日本大震災の津波による福島第一発電所 の事故以降、大変危険な発電所であるといった世論が蔓延しています。私が東京電力在籍の立場で様々に申し上げた時、何を申し上げても電力業界寄りの発言だと思われてしまうかも知れませんが、このホームページでは冒頭に申し上げたとおり、冷静にエネルギーに関して記してみたいと思っておりますので、原子力発電に関しても決して偏った書き方はしないつもりでおります。

◎まず、現在の原子力発電に関する私の考えを述べておきます。
①原子力発電そのものに関しては大賛成でも大反対でもありません。ただ現在の日本においては様々な角度から考えて、使うべきだと思っています。
・原子力発電所が停止中の電気料金は高く、火力発電が主のため石油やガスなどの輸入価格に大きく左右されており、特に中小企業には電気料金の高騰は大きな負担となっています。市民生活を含めて日本経済のためには電気料金はなるべく安く抑え、また安定したものである必要があります。
・現在の火力発電に使用している石油・石炭・ガスなどの主力燃料はすべて輸入に頼っています。日本を不能にするにはこれらの輸入経路を絶てばよいという状況にあり、自国に自給可能なエネルギー源が無いことは異常な状況です。原子力発電は一度装荷すると一年程度は燃料を交換する必要がないこと、使用済燃料を再処理することで資源燃料として再利用できるなどの特質から、ウラン燃料を保持している状態はある程度は自前のエネルギーとして計算できます。(原子力発電・・その3に明記します)
・地球温暖化防止の観点から、これ以上余分に化石燃料を燃やしCO2を撒き散らしながらも近代的な生活を維持しようとする世の中の姿勢はよくないことだと考えます。また火力発電の発電効率は良くても50%からそれ以下ですので化石燃料エネルギーの半分は捨てていることになっています。

②現在世界中で確立されている発電方式の中では最高の発電技術です。それは発電容量に対する発電コストや発電所の敷地面積、電力供給の安定性、電力品質、CO2の発生量、燃料の調達など様々な分野で他の発電方式に勝っているからです。

③現在停止中の日本の原子力発電所は発電をしていないだけで燃料は装着されています。従って東日本大震災の時の福島第一原子力発電所と同様の状況に陥れば発電をしていなくても同様の事故を起こす可能性があります。ならば発電していても停止していてもほぼ同じ環境であるのだから発電を許可するべきだと思います。
その場合、状況を理解していても国民感情として安易に容認されない世の中になってしまっていることを十分に考慮して、過剰に感じるほどの安全対策を施しそれを積極的に国民に公開し、少なくとも国民の過半数以上の理解を得ることが最低限の運転再開条件だと思います。

④原子力発電の代替えが出来る発電方式は残念ながら現時点では存在しません。その発電方式が確立されるまでは、おそらく最低でも20年程度は既存の原子力発電所は安全性を高めた上で稼働し続ける必要があります。

⑤核のゴミの捨て場所がない、と言われますが、核燃料サイクルに関しては研究が進められていましたので、この技術の確立により燃料のゴミ化は縮小可能だと考えます。他に廃棄物処理や原子力発電所の廃炉の対策と技術には一層の努力が必要になります。
ちなみに火力発電で膨大に出しているCO2の捨て場もありません。

⑥日本の原子力発電技術は世界一です。今後新増設が予想される中国や韓国などの他国の原子力発電には残念ながら信頼性がありません。日本国内での優秀な原子力発電所の事故の可能性より、中国など近隣国の原子力発電所の事故の方が余程脅威です。本来、日本はアジア・世界のエネルギー問題克服に向けた積極的貢献が求められる立場にあります。

⑦福島の原子力発電所の事故以降、日本の大学の原子力工学といった学部は希望者がいなくなり閉鎖されたところが多くあります。このまま再稼働の結論を先延ばしにすることは日本の原子力技術の衰退と後継技術者育成に影響がでます。万一今後一基も原子力発電所を稼働させないとしても、廃炉にするための技術が未熟ですから向う50年から100年程度は原子力技術に長けた人材は必要になります。

◎物事は何でもそうですが感情的にならず全体像を見ながら判断することが重要だと考えます。そして 全体像を見るためには正しく広い知識が必要となります。現在の日本人の原子力発電に対する考え方や理解度はお世辞にも正しいものとは言えません。これは国が原子力発電に対して真に責任を持たず、国民に対して学校教育の場などでエネルギー教育、原子力発電教育をして来なかったことが大きな要因になっています。正しく学んだ知識を前提にした正しい怖がり方が出来ていないことが、事を余計にややこしくしてしまっています。その他に、国に代わって新増設させなくてはならない電力会社が、自らが唱える安全性にどっぷり浸かり過ぎて自らが安全神話にはまってしまったことは大いに反省すべき点です。こういった背景により国民が正しい知識を持っていない中で遭遇した福島第一原子力発電所の事故により日本人の原子力発電に対する意識が大きく歪んでしまっていると私は感じています。

相沢こうた
八王子市議会議員