八王子市議会議員

相沢こうた

KOHTA AIZAWA

相沢こうたNEWS
VOL.48「視察報告」

視察報告

視察年月日・・平成28年7月13日~7月14日

視察場所、及びテーマ
①高知県・・・集落活動センターについて
②高知県四万十市・・・地場産ヒノキの活用について

1.高知県・・・「集落活動センターの取組み」

◇高知県の人口は県人口の51.4%が高知と隣接する南国市の2市に集中しています。県全体の森林面積は83.6%と全国で1位と県の4/5以上が山間部で、その中に集落が点在している形で県民の生活があります。この中山間地域の現状と対策を捉えて、集落活動センターの取組みを進めています。高齢化する集落の対策を参考にさせていただきたく視察させていただきました。

◇高知県産業振興推進部中山間地域対策課 チーフ 樋口 裕也氏

◎集落活動センターの取組みについて
◇高知県の地形の特徴

・山間部
・V字型の地形である・・山と山の間に川が流れている
・農地に適した土地が少ない・・傾斜地が多く平地が無い
・家屋が斜面に点在し集落を形成している

・海岸部
・山と海の距離が近い・・平地が少ない

☆以上から非常に地理的・地形的な条件が厳しく、一次産業中心の産業構造となっている。

◇中山間地域の現状と課題

○人口減少
・人口減少は昭和35年から続いており、50年間で約20万人も減少した。
・生産人口は30年で△43%、過疎地の若年層(15歳未満)に至っては△74%となっている。
高齢化率は28.8%で全国3位、過疎地域の高齢化率は37.3%で県平均より8.5%も高く、高齢化率50%を超える限界集落も増加している。

○集落調査
・人口減少の事実から各集落について平成23年度から個別に調査をはじめた。
集落の現実・現状は国勢調査などの数値ではわからない部分もあるため、中山間地域の実情や住民の思いや考えを知る調査を行ったとのこと。
調査対象は2537ある集落のうち、1359の50世帯未満の集落について実施した。

☆集落調査の結果から
・集落の維持が出来ない・・10年後には消滅してしまうのではないか・75%
・集落での協働作業やコミュニティ活動が出来ていない
・集落での活動を先導するリーダーがいない
・日常生活に必要な生活物資すら確保することが難しい
・病院や役場などへの移動手段がない
・飲料水の確保すら難しい
・地場産業である産業(一次産業)の後継者がいない
・耕作放棄地、手入れをしていない山林などが増加している
・野生鳥獣による被害が増加している
※この結果にも関わらず、現在の集落に住み続けたい76.7%、愛着がある93.0%

○集落調査を踏まえた対策
・地域の方々の「愛着があり住み続けたい」という希望・気持ちを重視し、集落を整理してどこかに集約をする、いわゆる国の言う「コンパクトシティ」という方法ではなく、現在ある集落をそのままに維持していく方向で取り組むこととした。
・庁内の組織体制を強化
対策の実施のために関連する部署が多いため、中山間対策を統括する「理事」新設する。
また中山間対策に関連する総合的な政策を実施・推進する「中山間地域対策課」を新設。
・中山間地域で誰もが一定の収入を得ながら安心して暮らし続けることができる仕組みづくりを推進していくことを目標として、生活を守り産業を作ることを2本の柱とした中山間対策の総合的な政策を推進していくこととした。

○具体的対策
・集落支援
集落活動センター・・地域住民が主体となって、旧小学校、集会所などを拠点に、地域外の人材等を活用しながら近隣の集落との連携を図り、生活・福祉・産業・防災などの活動について、それぞれの地域課題やニーズに応じて総合的に地域ぐるみで取組む仕組み。
活用する施設は、旧小学校、集会所の他に、宿泊施設であったところ、ガソリンスタンドなどの割合に広い建物や敷地であったところなどを、その地域ごとに選択して活用。
平成28年4月現在で30か所の開設。
・集落活動センターの取組みの支援策(高知県として)
 資金面での支援、アドバイザーの派遣、研修会の開催、支援チームによる支援、情報提供による支援などを行い、各支援センターの運営や運営方針に関しては市町村行政ごとに実施している。
・集落支援センターの設置目標
130か所の設置を目標としている。これに対して現在30か所の設置。

○その他
・集落活動センターのリーダーについて
元々地域のリーダー的存在であった方にお願いしているケースが多く、年齢は70歳代が多く、60歳代であれば若手の方である。
・市区町村の対応、対策に関して
市区町村の具体的方策や体制にまでは県として言えない部分が多いが、指導に関しては出先機関を通じて伝えるようにしている。当然、市区町村ごとに細かな対応、対策は違っている。
市区町村に関しても本業務を担当する人材が非常に大事だと感じており、人に関わる事業のため県と市町村、地域といった人の関係づくりが非常に大事であると考え重視している。
・国のコンパクトシティの考え方は地域住民の意思・意向と合致していないと感じており、あくまでも既存にある生活地盤を重視した取組みが大事だと捉えている。
・地元の若い人たちに関して
地元(高知県内)の高校を卒業したら県内の大学に行って欲しいという希望は持っている。
県内の大学では地域ボランティアを必須としたり、それを行わないと単位が取れないなどの仕組みを導入してもらったりしている。また地元の高校と地域の距離を縮める取組みも進めている。
・県全体では40代で地元に戻ってくる人の割合が少しずつ増加しているため、こういった動きにも期待しているところである。

○所感

◇近年、地方の自治体にお伺いして見せていただく資料の人口の欄はどこでも減少傾向を表しており、その度に人口減少社会に既に突入しているのだと強く感じます。人口減少社会に対応する方策としてその地方の実情に合わせて様々に取り組んでいる訳ですが、集落が高齢化し縮小していく中でそこに暮らしている人々は地域に愛着を感じ住み続けたいと思っている、その気持ちを大切にするのか、長期ベースで見た将来の形を優先し故郷を捨てさせ統合するのか、ということは非常に悩ましい問題だと思います。高知県では前者を選択しどこかに集約してしまうコンパクトシティの考え方に窮さず地域の歴史とそこに住み続ける人たちの本当の幸せを守ろうとしています。この判断には現時点で正解か不正解かという答えは出せないと思いますし、地域に寄り添うという判断は有りだとも思います。しかしその取組みには前途多難な部分が多くあるのは当然のことと感じました。都会的といいますか人間関係が希薄化してきてしまっている地域では絶対に叶わない方策ですが、高知県の取組みには個人的には人間的な温かみを感じました。もちろんそういった人情だけで事は成し得ない訳ですが、本施策の今後の展開と発展に注目してみたいと思っています。地域が協力して生活していくということ、人として生きていくということ、こういったことを日本の国として真剣に考えなくてはいけない時代に既に突入していると改めて強く感じた次第です。

2.高知県四万十市・・地場産ヒノキの活用について

◇四万十市では地場産のヒノキなどの産材を活用する取組みを行っています。私たちの三多摩地区でも多摩産材の活用を行政にお願いしていますので、本取組みは多摩産材活用の施策につながるものがあると考え視察させていただくこととしました。

◇四万十市農水産課課長補佐 渡邊 康氏、同係長 岡田 圭一氏

○地場産ヒノキの活用について

◇地場のヒノキについて
・高知県はその84%が森林であり、スギやヒノキといった森林資源が豊富である。特に四万十地域はヒノキが豊富であり、古くから住宅や神社仏閣などの建築資材として活用されてきたという背景がある。
・四万十市は森林面積が85%を占めており、人工林資源が成熟し利用可能な時期を迎えている一方で、資源の利用が不十分で木材価格も低迷していることなども影響して林業生産活動が停滞するとともに、森林の維持管理や整備などの低下が危惧されている。
◇地場産木材の利用推進
・一般家屋建築時の地場産材を利用した建築の推進を行うとともに、公共建築物でのヒノキをはじめとした地場木材の利用促進を図っている。
・四万十市内の公共建築物に関しては、庁舎・学校・体育館・病院・文化施設・市営住宅・公衆トイレに至るまで、基本的に2階建て以下は木造とすることを条例で定めた。
・一般家屋に対しては地場産木材を基準以上利用した建築に対して補助金(100万円)を出し推奨することとした。

○進め方、現状など

◇一般住宅に関して
・一般住宅に関しては四万十市でもハウスメーカーによる建設は増加傾向にあるが、100万円ではあるが補助金支給には魅力があるようで、補助金が地場産木材を活用した住宅建設決断の決め手になるケースは多いと確認している。
・補助金の支給に関しては、
①製材所で地元の木材を使用することを市の職員が確認 ⇒
②棟上げ時に中間の確認 ⇒
③竣工時に確認 ⇒
④補助金の支給
・ハウスメーカーの家との価格差について 木材が安価になってきており、2000万円程度の一般住宅であればほぼ同価格である。
・地場産材活用の一般住宅は年30軒程度。全体の新築住宅が200軒程度のため、1.5割。
◇その他
地場産材の家は地元の設計事務所、工務店、大工を使ってもらうため、例えば2000万円の家を作ってもらえば2000万円が地元に落ちることになる。地元の木を使って地元の手を使っていただくことで何とか地元にお金を回したいと考えている。
大工などが高齢化していることを、地元に仕事を作ることで改善していきたい。
この施策以降、後継ぎが出来たという大工さんも現れたとのこと。
・ヒノキはスギなどに比較して成長が遅いが、強度はヒノキの方があるそうで、高価なイメージがあるが、価格に関してはスギなどとほとんど同じに落ち着いているとのこと。

○所感

・地場産材を使った建築物を増やしていく取組みの裏には、①地元産業の活性化 ②地元の経済の活性化 ③地元で生きる方々の引き留めと生活確保 ④伝統ある職業の継承 など多岐に渡る目的がありました。八王子市を見ても工務店、大工、建具屋、電気屋など手作りの家づくりに寄与してきた職種に携わる人たちが減少しています。地場産材を利用する取組みは地域の維持という「ひと・もの・しごと創生」につながる視点が反映されているものでした。高知県の集落の取組みで「地域に愛着を感じ暮らし続けたい」という人の割合が圧倒的に多いというお話をお聞きしましたが、そういった側面からも地域に住み続けるためにはそこに仕事がありお金の流れがなくてはならないということを十分に意識して展開した施策でした。そういった視点から比較すると多摩地区で展開している多摩産材の取組みでは、目的・目標がぼやけていることが施策が展開していかない大きな要因なのではないかと感じました。
 ヒノキで建築した公共施設を数か所ご案内いただきました。ヒノキは香りが強く木目が美しかったです。市民の身近に公共施設としてヒノキの建物を作っていくことでヒノキ造りの良さを見せて市民に実感させる施策展開は有効な取組みだと思いました。
 ひとつの施策に具体的な複数の目的を持たせていること、そしてこの取組みは四万十市として真剣に力を入れた取組みになっていることは大変勉強になりました。

相沢こうた
八王子市議会議員