八王子市議会議員

相沢こうた

KOHTA AIZAWA

相沢こうたNEWS
VOL.38 「議会報告」

平成26年第3回定例議会
《一般質問》

1.無電柱化基本法(仮称)に対する本市の考え方・対応について

◇【無電柱化基本法とは】

現在、国では自民党内において、景観の保全や防災の強化を図るために電柱をなくす「無電柱化」を推進する考え方を進めています。架空線については街の景観を損ねるうえ、災害時に電柱が倒れた場合、通行の妨げになるという指摘があり、今までも国は大都市を中心に地中化に取り組んでいますが、東京23区内でも地中化率は7%にとどまっています。自民党内の「無電柱化小委員会」、小委員長・小池百合子氏、が数回開催され2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて景観の改善や防災の強化を進める目的で無電柱化を推進する提言をこの秋に最終提言として取りまとめ、次期の通常国会に「仮称・無電柱化基本法」の法案を提出したいとしています。

冒頭、この質問をする主旨について誤解のないようお断りしておきますが、様々に設備を持っている事業者側は電柱でも無電柱でも方針が決まってしまえば粛々とそれに対応するまでで、今回はその方式がよいとか悪いとかを事業者目線で申し上げるものではございません。またこの基本法について研究している政党に関して何かを申し上げるものでもございません。世の中の一つの流れとしてそういう考え方がクローズアップされつつあるものに対して世の中の現実としてそれがすんなりと受け入れられるものなのかどうなのか、という角度から様々に考えてみた、というものです。

◇【無電柱化小委員会中間とりまとめ(平成26年6月19日付)の内容】

欧米の主要都市では第二次世界大戦以前から地中化が標準とされてきたこと、台湾、インドネシア、中国等のアジアの各国都市においても無電柱化が顕著に進展していると他国を評価した一方で、日本国民が電柱・電線のある風景を許容している状況を「電線病」・・電気の線の病・・と表現し、東京23区内でも現在の地中化率が7%に過ぎず、今後日本の街が輝きを取り戻すためには日本人の常識の抜本的な転換が必要であるとしています。

電柱が立っている状態を普通とする日本の常識を、電柱が無いことが常識となるよう意識改革を進め、無電柱化を先送りせずこれまでにないスピードで進めるために、その基本方針となる「仮称・無電柱化基本法」を近く策定するとしており、具体的な手法として、道路の新設・拡幅等を行う際や面開発の実施時には新たな電柱の立地を原則禁止とする、従来の電線共同溝方式は道路幅員や整備コスト、地域との合意形成などの課題解決が限界に来ているとして、新たに簡素な電線埋設工法の導入をする、予算負担の見直しや税制面からの誘導方策の検討、更には地域の連携のために地方公共団体が主体となった地元の合意形成と協力体制の仕組みを構築する、などとあります。

◇【地方行政としての現状】

電柱に添架されている線は、電気・電話とその他様々な通信線・ケーブルテレビ・有線放送などがあり、防犯灯や道路照明灯、地番表示や避難誘導・地域情報などの表示もあり、街の景観としてだけ見れば邪魔なものに分類されるかも知れませんが、人が生活していくために欠かせない様々な役割りを果たしています。

現在は事業者側だけの判断で地中化する事は行っておらず、全ての電線類地中化事業は行政、道路管理者、地区開発事業者などの要請があった上で様々に検討・調整し実施しています。中間とりまとめを読むと、電柱を所有している事業者よりも行政サイドの方により多くの方針転換や意識転換を求めるとともに業務に直結し業務量が大幅に増加するものだと私はとらえております。

Q無電柱化に向けた国の動きについて、地方行政に対して見解を求められたりした経過はありますか。

A国や東京都から八王子市に対して具体的な情報や紹介等はまだきたことはない。

Q国の動きに対して行政として何か準備している事柄などはありますか。

A新聞報道などで無電柱化基本法の内容の一部を確認している程度で、電線類地中化事業はコストや技術面で様々な課題があるため、今後はこの法案の動向に注視していきたいと考えている。

◇【電線類地中化が日本で進まない理由】

①工事費用や設備費用が圧倒的に高額となります。架空線と地中線ではおおよそ10倍以上の費用差があり、この高額な費用差分は実施すれば当然、電気料金などのライフライン使用料に影響してきますので、こういった負担分を上乗せしてでも実施するメリットを皆さんが感じるかということが問題となります。
更に電柱には様々なものが共架してありますので、これらの全てを地中化したり、防犯灯など付随している設備を独自の設備として整備すると更に多くの費用が掛かります。そうなると電気料金や電話料金だけに止まらず、税金にもその費用が上乗せされることになり国民生活への影響が大きくなります。高額な設備費を負担してまでケーブルテレビや地域の有線放送が整備されるかと考えると、架空設備を利用して各家庭や施設への引き込みなどを含めて簡易に施行できるから採算がとれている事業については、その存在すら怪しくなってしまうのが現実だと思います。

②既に出来上がってしまっている町で、大規模に道路を掘削して停電や通信回線停止を何回も繰り返し作業をすることへの地域や使用される方々のご理解とご協力をいただく難しさ、既に多くの埋設物が存在する道路での新たな埋設工事や埋設位置確保などの仕事は非常に難易度が高く工事施工が困難であること、道路管理者や警察など関係個所との様々な部分での調整の難しさ、更には既存の道路と付帯設備、受け手側の建物や設備などの全てが地下からの供給を全く想定していない作りであることによる難しさ、など工事施工に係る足かせがあまりにも多いことです。電柱を立てて電線を張る工事と比較すると地域への迷惑度や工期、工事の難易度など様々な分野で大きな違いがあるのです。

③第三に設備運用面で圧倒的に架空線の方が扱いやすく、受電側への迷惑度が低いことです。また地中設備の方が自然災害などの影響は受けにくいのですが一度設備事故を発生させると事故点発見からその復旧までに長時間を要します。非常災害時の電力の復旧日数は5日程度と想定されており、実際に阪神淡路大震災、中越沖地震などの震災時にはその程度の日数で仮復旧が終わっていますが、これは架空線であることが前提で、地中線の比率が高ければ場合によってはその数倍の時間を要することになります。こういった設備の新増設や事故対応などの運用面で圧倒的に架空線が有利です。
他に山間部など遠隔地への需要拡大、施工技術、設備形成の難易度、技術員養成など様々な分野での問題点が多くあります。

◇【無電柱化法の課題】

今まで社会生活の発展のために寄与してきた電柱は全国に3700万本あり現在も毎年7万本ほどずつ増加しているそうですが、見た目が悪いということだけで一転して減っていくことになることは、地中化による新たな雇用を生むことの反面で、現在電柱に関わっている産業、雇用は大変多くそれらを喪失させる面を持っており、景観面から電線病だと位置付け無くせばよいという簡単なことでは片付けられない社会や業界の大問題となる可能性も孕んでいると思っております。日本には日本の電柱文化というものがあります。
当面、東京オリンピックに向けた施策のひとつとして整理されるのであれば東京都下にまで同様に波及する話しであるのかは解りませんが、東京都ではなく国が無電柱化基本法として定めるということは全く無関係ではないと考えます。

Q八王子市が進めている富士見通りとみさき通りの電線類地中化の目的についてお聞かせください。

A富士見通りとみさき通りはJR八王子駅周辺交通環境改善検討協議会で駅周辺の環境改善を目的に選定された優先路線であるため実施している。

Q現時点で八王子市が進める電線類地中化の基本的な考え方についてお伺いします。

A市では良好な都市景観の創出、安全で快適な歩行空間の確保、都市防災機能の強化の観点から電線類地中化事業を進めている。また一般国道及びこれらを連絡する幹線道路は主に国において震災時における緊急輸送を円滑に行う目的で事業を進めている。

Q無電柱化による道路照明、緊急避難場所や路上喫煙禁止、地番表示などはどのように扱っていますか。

A道路照明は単独柱の建柱により対応している。また各表示類については独立柱、民地の塀、商店街の照明灯など協力してもらえるところに設置したりしている。

Q電線類が地中化されている区間には、電力設備では地上部に地上用開閉器、変圧器低圧用分岐装置といったボックスが設置してあります。八王子市では現在はこのボックスについては電柱にある電柱広告や地番表示のような活用はしていません。
電柱広告はそれぞれ電柱とは別に占用料を納めていますのでこれらのボックスへの地域広告物活用は行政の許可とそこへの申請が必要になると思いますが、電柱が無くなってしまった地域では地番表示などを含めてこの地上に設置してあるボックスを活用するのは一つの手段だと考えます。この件は今後の国の無電柱化法案を待つまでもなく既に電線類地中化が実施されている区間については活用すべきではないかと思いますが如何でしょうか。

A国と東京都に確認したところ、電力設備ボックスへの広告類の設置は許可していないということであった。八王子市では今のところ活用していないが今後の研究課題としていきたいと考える。

Q無電柱化検討小委員会の中間とりまとめの中に「道路の新設、拡幅を行う際や面開発の実施時において、同時整備を促進するなどにより、新たな電柱の立地を原則禁止とする」という基本方針が載っています。既存の電柱を地下化することはすぐに進まないとしても、新規の開発地域は無電柱化を進めなくてはならなくなりますとインター北地区、沖電気跡地の宅地開発などは電柱が無い形状での設計とする必要が出てきますし、先々の川口物流基地なども対象となるのではないかと推測します。物流基地は住宅密集地域とは程遠く山間部ですので果たしてここに高額な費用を掛ける意味があるのか疑問符がつきます。地区開発に伴って電線類地中化を実施する場合、電線共同溝を設置するなど行政の負担が増大します。法案がどこまでの範囲を地中化として設定してくるのか、例外は認めるのか定かではありませんが、少なくとも今から注視すべきで、場合によっては大幅な地区開発の設計変更につながる可能性を秘めてもいます。するメリットが薄いものに関して除外できる運用面での市の上乗せ基準なども検討しておく必要があると思いますが、このあたりの進め方に関してお考えをお聞かせください。

A市では電線類地中化を進めていくためには地域に即した状況や費用対効果等の諸条件を十分勘案する必要があると考えており、基準等の検討等に関しては今後国の動きを注視して対応していきたいと考える。

Q行政として、もしもこういった法案が現実のものとなった時にどのような部分に問題があるとお考えになるか、また行政として大きな様々な負担を乗り越えてまで取り組む必要性が多いにあり、無電柱化は是非実現したい事柄なのか、そのあたりの考え方についてお答えください。

A電線類地中化事業は地上機器を設置する場所が必要であり、限られた道路空間で整備するにはコストや技術的制約で様々な課題があると考える。交通環境改善検討会等でまちづくりのために必要と位置付けられた路線については必要であるとかんがえる。

Qまだ正式な法案になっていない状況ですが、無電柱化についての地方行政の考え方などを国や政府に伝える手法があるのか、更に地方行政として負担が大きいというものであると判断した場合には、その意思を伝える動きを取るのか静観するだけなのかなどについてはどうお考えですか。

Aどのような法案になるか今後の情報収集を行いたい。増加するであろう財政負担について東京都と連携を図るとともに様々な機会をとらえて伝えて行きたい。

相沢こうた
八王子市議会議員